大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)1140号 決定 1951年8月09日

主文

本件上告を棄却する。

被告人伊藤恒延に対する当審における未決勾留日数中三〇〇日を同人の本刑に算入する。

理由

被告人古川和夫の弁護人古川豊吉の上告趣意第一点について。

所論は、第一審の訴訟手続の違法を主張するに過ぎないから、明らかに刑訴四〇五条に定める上告理由に当らない。そして、被告人が在廷する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴三二一条、三二六条等の要件あるを以て足り(本件では同三二六条の同意があること記録上明白である。)、同二七八条刑訴規則一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第二点について。

所論は、刑の量定不当の主張であるから、刑訴四〇五条所定の事由に当らないし、また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

被告人伊藤恒廷の上告趣意について。

所論一点は、第一審判決は相被告人古川和夫といずれが主犯であるかその他犯罪の動機等につき重大な事実の誤認があるというのであり、同二点は、被害者に暴行及び傷害を加えたことがないのに虚偽の診断書並びに証言でこれを認定したのは法令の違反があるというのであり、同三点は第一審判決当時満一八歳以上であったが判決後昭和二六年一月一日から新少年法が施行になり刑の変更があったというのであるから、いずれも刑訴四〇五条に定める上告理由に当らない。また、記録を精査しても(ことに新少年法が施行されても被告人は現に満二〇歳以上である)同四一一条を適用すべきものとは認められない。

被告人伊藤恒廷の弁護人薬師寺志光の上告趣意について。

所論は、明らかに刑訴四〇五条に当らない。また、犯罪の箇数は所論のごとく犯人の内心に生ずる犯意の度数のみによって決すべきではなく、そして、第一審判決は、のぶえ並に康輔の両名に対し夫々判示の暴行を加え、因って両名に対し夫々判示傷害を加えたものと認定したのであるから、二箇の強盗傷人の併合罪として処断したからといって法の適用を誤ったとはいえない。その他記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号に従い各上告を棄却し被告人伊藤恒廷に対する未決勾留日数の算入につき刑法二一条に則り主文のとおり決定する。

この決定は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例